
きょうは「要件定義書が書けない」の正体を分解してみます
アプリを作りたい。
その前に要件定義書を書こうとして、手が止まる。
よくある話だと思っています。
そして、たいてい次のように悩みます。
「Wordだと大項目・中項目・小項目が書きにくい」
「どのツールを使えばいいのか」
わたしも、まずツールを探しちゃうかも

ここが分かれ目です。
ツールで詰まっているように見えて、実際は中身が決まっていないだけのことが、かなり多いのです。
そしてこれは、要件定義に限った話ではないと思っています。
学生時代の課題には、範囲がありました。
「ここからここまで」を誰かが決めてくれる。
大人になってからの仕事も、学び直しも、そこが違います。
要件定義書とは、「範囲を自分で決める」という大人の作業を、紙の上でやってみる練習です。
順に見ていきます。
要件定義書は、何を書けば足りるのか
先に結論を書きます。
目的/スコープ/機能要件/非機能要件/使われ方/制約。
この6つがそろっていれば、要件定義書として足ります。
1つずつ、短く見ます。
① 目的:何が解決したら終わりなのか
「便利にする」では足りません。
終わりの判定ができないからです。
「毎月40時間かかっている集計を、5時間にする」
ここまで書けると、後の判断が全部これで決まります。
② スコープ:やらないことを書く
ここが一番、抜けます。
やることは自然に書けます。
でも「やらないこと」を書いていないと、あとから際限なく増えます。
「今回は集計まで。グラフは作らない」
この一行が、後々の自分を守ります。
③④ 機能要件と非機能要件:「何をするか」と「どうあるべきか」
機能要件は、動きの話です。
「CSVを読み込む」「合計を出す」
非機能要件は、質の話です。
「3秒以内に返す」「落ちても壊れない」「他人に見えない」
忘れられるのは、いつも後者のほうです。
そして後から効いてくるのも、後者です。
⑤ 使われ方:誰が、どんなときに触るのか
ユーザーストーリー、ユースケース。
呼び方はどれでもかまいません。
要は「誰が」「どんな状況で」「何をしたいか」を一文で書くことです。
「経理担当が、月末に、支店ごとの合計を確認したい」
この一文があると、画面の形が自然に決まります。
⑥ 制約:変えられない前提
使える環境、期限、予算、社内のルール。
「そもそも新しいソフトを入れられない職場だった」
——これを最後に知ると、作ったものが丸ごと使えません。
では、Wordで階層が書きにくい問題はどうするか
ここからが道具の話です。
先に切り分けておきます。
Wordが書きにくいのではありません。見出しスタイルを使っていないだけのことが多いのです。
文字を大きくして太字にする。
これは見出しではありません。
ただの装飾された本文です。
見出し1・見出し2・見出し3を使うと、階層は勝手にそろいます。
番号も自動で振られます。
目次も自動で作られます。
それだけで解決するの?


けっこう、します。それでも合わないなら、そこで初めて道具を替える番です
それでも替えるなら、選び方は3つだけ
Markdown。
記号だけで階層が書けます。
差分が追えるので、あとから「どこを変えたか」が残ります。
1人で書くならこれが一番軽いと思っています。
Googleドキュメント。
共有と同時編集が要るならこちら。
見出し機能とアウトライン表示があるので、階層は問題になりません。
Confluenceなどの専用ツール。
テンプレートがそろっていて、複数人・複数文書を長く運用するとき強い。
逆に言えば、1人の個人開発では機能が余ります。
道具は、書く人数と、あとから追いたいかどうかで決まります。
書きやすさで選ぶと、たいてい迷子になります。
個人開発では、どこまで書けば十分か
最後に、実際のところを。
要件定義書は、会社の仕事だと分厚くなります。
関わる人が多く、あとで「言った・言わない」になるからです。
1人で作るなら、そこは要りません。
A4で1枚から2枚。それで十分です。
ただし、1枚にするために削るのは分量であって、項目ではありません。
6つの見出しは残す。中身を1行ずつにする。
1行ずつでもいいんだ


いいと思っています。立派な文書を作るのが目的ではないので
書く目的は、立派な文書を作ることではありません。
半年後の自分が「なぜこう決めたか」を思い出せるようにすることです。
作りながら、要件は必ず変わります。
そのとき、変えた記録が残っていれば迷いません。
残っていなければ、また最初から考え直すことになります。
要件定義書が書けないのは、文書力の問題ではありません。
「何をやらないか」を、まだ決めていないだけです。
迷ったら、②のスコープから書いてみてください。
やらないことが決まると、残りは驚くほど早く埋まります。
そして、これは紙の上だけの話ではありません。
やらないことを決める力は、そのまま学び直しにも効きます。
大人の勉強が終わらないのは、範囲を切っていないからです。
この違いについては、受験勉強と社会に出てからの勉強は、何が違うのかで書きました。
そもそもなぜ学び直すのか、というところは学び直しが必要な理由。成長の源泉はどこにあるかにまとめています。
